ChatGPT に代表される生成AIは、文章や画像を「画面の中で」つくることを得意としています。これに対して、ロボットなどの「体」を持ち、現実の世界で物をつかんだり、移動したりするAIをフィジカルAI(身体性AI、Embodied AI)と呼びます。本記事では、フィジカルAIの基本と、学び始めるためのポイントを解説します。
フィジカルAIとは
フィジカルAIとは、センサーで周囲の環境を認識し、AIで次の行動を判断し、モーターやアームで実際に動作する、という一連の流れを一体として扱うAIです。日本語では「身体性AI」「エンボディドAI」とも呼ばれます。
生成AIが「言葉やデータの世界」で完結するのに対し、フィジカルAIは重力・摩擦・接触といった物理法則のある現実世界で結果を出す必要があります。そのため、AIモデルだけでなく、ロボットのハードウェアや制御、実環境で集めたデータが重要になります。
フィジカルAIを構成する3つの要素
- 認識(Perception):カメラ、LiDAR、IMU、触覚センサーなどで周囲や物体の状態を把握する
- 判断(Decision):大規模言語モデル(LLM)や画像認識モデルで、指示を理解しタスクを計画する
- 動作(Action):移動ベース、ロボットアーム、ロボットハンドで実際に作業する
最近では、自然言語で「赤い箱を右の棚に移して」と指示すると、LLM がタスクを分解し、ロボットが画像認識と動作計画を組み合わせて実行する、といったことが研究・教育の現場でも実現できるようになっています。
なぜ今、フィジカルAIが注目されているのか
理由は大きく3つあります。1つ目は、LLM の進化でロボットが人の言葉を理解し、柔軟にタスクを計画できるようになったこと。2つ目は、ヒューマノイドや高器用性ロボットハンドなど、人の動きに近いハードウェアが手の届く価格になってきたこと。3つ目は、人の操作をデータとして集め、そのデータでロボットを学習させる「模倣学習」の手法が確立しつつあることです。
フィジカルAIを学ぶには
フィジカルAIは、ソフトウェアだけでは身につきません。実機を使って、センサーの値を読み、ROS でロボットを動かし、AIモデルと組み合わせる経験が欠かせません。大学・高専・企業研修では、次のようなステップで学ぶのが一般的です。
- STEP 1:ROS・SLAM・PID 制御など、移動ロボットの基礎を学ぶ
- STEP 2:ロボットの構造・駆動・制御をモジュール単位で理解する
- STEP 3:LLM・画像認識とロボットアームを組み合わせ、認識から動作までを統合する
- STEP 4:課題解決型の実習で、チームでロボットシステムを開発する
各ステップに対応する教育用プラットフォームの例は次のとおりです。
- UNI-WR2S:ROS・SLAM 学習用のデスクトップ型ロボット(STEP 1)
- GX-MAT-09S:モジュール式のエンボディドAIロボット設計キット(STEP 2)
- RAI-M4:LLM 連携のフィジカルAI学習プラットフォーム(STEP 3)
- RAI-P4:ロボットアームによるタスク計画実習プラットフォーム(STEP 3)
- PBL 開発実習システム:課題解決型の開発実習(STEP 4)
研究・産業での活用
研究や産業の現場では、器用な手作業の自動化、サービスロボット、ヒューマノイドの開発などにフィジカルAIが使われ始めています。たとえば、データグローブで人の手の動きと触覚を記録し、多指ロボットハンドで再現しながら学習データを集める、といった取り組みです。
- Wuji Glove:手の動きと触覚を記録するデータグローブ
- Wuji Hand 2:20自由度の高器用性ロボットハンド
- UX052:車輪型ヒューマノイド向けの移動ベース
- BXI Elf3:ヒューマノイドのボディODM
まとめ
フィジカルAIは、「認識・判断・動作」を現実世界で一体として行うAIです。生成AIの進化とロボットハードウェアの普及により、教育・研究・産業のすべてで取り組みやすくなっています。HumansX は、フィジカルAIを学び、創り、実装するためのロボットプラットフォームを提供しています。導入や授業設計のご相談は、お気軽にお問い合わせください。